Japan Embassy

Header

U40 スペシャル座談会

輸入、教育、ITという3つの異なる分野で活躍するU40世代のベトナム人3人。
彼らに共通するのは日本との「縁」。日本と出会って以来、自分の夢を育て成長を続けながら、
自分なりのやり方でベトナムと日本の架け橋となってきた。これまでの経験を踏まえ、未来を担う子どもたちへの思いを聞いた。
参加者
    • グエン・キム・ガン(Nguyen Kim Ngan)
      経済学博士
    • グエン・フイ・タン(Nguyen Huy Thang)
      エイチビーラボ/代表取締役、キディハブ/会長
    • ヴゥ・テゥイ・リン(Vu Thuy Linh)
      ふぐ処理師・食物栄養学博士

日本に関わる前後で、イメージの違いはありましたか?

グエン・キム・ガン
(以下、ガン)
想像以上に素晴らしいと思いました。美しい景色、美味しい料理など、日本には魅力がたくさんあります。特に、おもてなしのサービスは日本ならではの魅力でしょう。また、飲み会など日常の場面で日本人の素直な姿が見えました。
グエン・フイ・タン
(以下、タン)
子どもの頃、「日本製品は高品質!」、「日本の塗料なら、どこを塗ってもきれいになる」など日本製品の質の良さについて耳にすることが多く、とても近代的な国だと思っていました。その印象は、日本の地方の大学に進学したときに覆されました(笑)。しかし、その後、仕事で大手日系企業の施設を訪問する機会があり、「良質な製品を生み出す現代的な日本」を改めて実感しました。
ヴゥ・テゥイ・リン
(以下、リン)
日本に行く前は、黒のスーツを着た真面目な人々が住む規律正しい国だという印象でした。それが実際に行ってみると、陽気でフレンドリーな一面もあることを知りました。特に飲み会では、みんなで楽しく盛り上がって過ごせて、お互いの価値観を理解する良い機会だと思います。

日本の活動を通じて感じた自身に求められる役割やスキル、
今後の課題を教えてください。

ガン
「報連相」は重要なスキルです。連絡する前に、自分の問題や伝えたいことを自分なりにしっかり整理し、対策も用意しておくことが大切。そうすれば、相手はあなたの努力を評価し、サポートしてくれるでしょう。また、日本での生活を円滑にするために、電車での飲食禁止などのマナーを守ることも大切です。大学教員の私は今まで英語で授業をしてきましたが、将来的には日本語で行うため、日本語のレベルをさらに向上させなければなりません。
リン
日本人は自分の意図を、すべて言葉で伝えないことが多いため、文脈を考慮して相手の言いたいことを推測する「空気を読むスキル」は重要です。また、日本語の意味を完全に理解できないなら、自分の理解度を素直に伝えたほうがいいですね。ほかにも、時間や税金の管理スキルも身に付ける必要があります。
タン
日本語での理解力を高めることが、空気を読むスキルを身につける前に重要だと思います。日本人の友達が面白い話をして、みんなが笑っているのに、私は5分後にやっと笑えたことがあります(笑)。一方、日本語ができれば、自分の意見も伝えられますし、仕事で高く評価してもらえます。また、日系企業が求めているのは日本人を真似る人ではありません。知識を高める志や陽気な性格などベトナム人の長所を生かして、課題に熱心に取り組んで仕事を進めていく人が大事にされます。私はよく飲み会に参加したのですが、日本人のみなさんはベトナム人である私の価値観や考え方を尊重し、理解してくれることを知りました。歴史に関する話題で盛り上がることも多かったので、もっと経験と知識を積み上げなければと思うようになりました。

日本で活動をし、良かった点はありますか?

ガン
日本は夢を現実にする場所です。「あなたの夢はなんですか」と日本人からよく聞かれました。日本人教授は私の夢の話を聞いて、アドバイスをしてくださいました。夢の話を批判されたり、笑われたりしたことはなかったです。日本の経済的な豊かさは、様々な小さなプロジェクトを支えてくれる大切な存在です。
タン
日本人は外国人に対して、とても忍耐強く接してくれて、いつも知識や経験を伝えてくれます。与えてくれたアドバイスのおかげで、自分が成長することができました。
リン
日本では何においても、製作から流通まで工程が明確で、リスクを減らすためにルールに基づいて物事が進められるという、「失敗しない流れ」があります。ベトナム人は何か新しいことを始めるのに積極的ですが、そこから品質と成功度を維持し、どう発展・展開させていくかにおいてノウハウがありません。そこには日本式の規律とリスクマネジメントのスキルが必要です。これらのスキルは、日常でも役に立ちます。

現在掲げる将来の目標は?

ガン
日本の教育は私の人生を変えてくれましたので、私の日本人の教授のように、学生に知識を伝えるだけでなく、若者たちの夢を支える存在になりたいです。また、ベトナムの投資環境の可能性、利点、課題など、ベトナム投資環境に関する情報をテーマにした、東北地方の中小企業向け無料セミナーを開催するつもりです。
タン
私の会社は、日本向けのオフショア開発会社で、IT人材400人を日本の各社に送ってきました。将来は、より良質な人材ソースを築き上げて1000人のIT人材を送りたいです。エンジニアたちは頭がいい一方で、ソフトスキルや経験がまだ少ないため、日本のノウハウを理解して、よりよい人材に育っていってほしいです。
リン
日本のふぐ食文化をベトナムに広めたいです。日本人によるフグ研究者・処理師会を設立して、ベトナム人にフグの処理方法を教えていきたい。また、代理店を通さず、大手日系企業と直接取引できるベトナム輸入会社も設立したいと思っています。

後に続く若い世代にメッセージを。

ガン
自分の能力に応じた具体的な目標を設定し、自分の夢を描きましょう。発展し規制も多い日本社会では慣れないことがたくさんがありますが、小さな目標を達成するたびに、次の目標を達成するための自信が徐々に高まっていくと思います。また、外国で学校、職場、日常生活で自分自身のネットワークを作り、付き合っていくことで、今後の人生がより良いものになるでしょう。
タン
日本語をはじめ、さまざまなスキルを身に付けてください。経験やスキル、経済力をすぐに得ようと焦るのではなく、若者らしい情熱、勇気、知識を磨きましょう。日本人は外国人を積極的に助け、アドバイスしてくれるので、努力すれば必ず多くのことを学ぶことができます。失うものが少ない若いうちに、やりたいことはすぐに始めて挑戦してほしい。そしてどの国に住んでいても、自分らしさを失わず、ベトナム人らしい前向きな姿勢で進んでいきましょう。
リン
日本での生活が大変だからといって、当初に日本に来た目標や夢を忘れないでほしいです。日本人は、どんなことに対しても正直な人を高く評価します。特に自分自身にも正直になりましょう。また、日本に限らずどこの国でも、礼儀正しくプロフェッショナルな精神という健全な知恵と心があれば、自分のキャリアをはじめ、良いものを引き寄せることができると考えます。また、ベトナムでは税金についてあまり気にしていなかった私ですが、日本に来てから税金についていろいろ調べて勉強しました。これは、個人の財務管理について学ぶ第一歩でもあります。
Profile
• グエン・キム・ガン(Nguyen Kim Ngan):経済学博士
経済的に恵まれない家族で生まれ育ったグエン・キム・ガンさんは、貧困から抜け出すために全力で勉強し、日本で経済学博士として企業のサプライチェーンの強化や日越技術移転などの支援に尽力。また、非営利団体「ベトアジ/BETOAJI」の仙台支部長として社会貢献活動にも従事している。
• グエン・フイ・タン(Nguyen Huy Thang):エイチビーラボ/代表取締役、キディハブ/会長
日本市場向けのITオフショアサービスを提供する「エイチビーラボ/HBLAB」の代表であり、ベトナムの幼稚園に日本の教育プログラムを導入する「キディハブ/KiddiHub」」の会長も務めるグエン・フイ・タンさん。日本留学で学んだ日本独特の考え方や精神で、情報技術と教育分野において日越の橋渡しを行う。
• ヴゥ・テゥイ・リン(Vu Thuy Linh):ふぐ処理師・食物栄養学博士
ベトナムで「フグ博士」と呼ばれるリンさんは、フグの捕獲も食べることも法的に禁止されているベトナムにおいて、フグの養殖・加工・輸出を実現し、海産分野における日越の協力を推進するために邁進している。フグ食文化をベトナムに根付かせたいというリンさんの人生は、フグ一色だ。

取材・文/Sketch Co., Ltd.